波形鋼板ウェブ合成構造研究会

Corrugated Steel-Web Bridge Association

顧問あいさつ

波形鋼板ウエブ合成構造研究会が発足してから既に25年以上が経過しました。この工法は、フランスのコニャック橋、モプレ橋、ドール橋に始まり、これらの橋梁を国際会議出席の際に視察して我が国での建設の可能性を検討したことが事の始まりと言えます。この技術の採用に際しては大浦隆氏(当時(株)ピー・エス)の熱意により新潟県の佐藤靖技師などの担当により第1号橋として新開橋が1993年に同県に完成しました。同県ではこの新しい工法を採用するに当たり、県技術職員の技術力向上も考えて技術検討委員会が組織され小職が委員長に指名されました。引き続いて秋田県においても同県の加藤修平技師などの担当で1996年に銀山御幸橋が完成しました。この時も小職が技術検討委員会の委員長を務めました。これらの技術的成果の蓄積保存と今後のこの新工法の橋梁を研究するために本研究会の活動が本格化してきました。ところが次の新設プロジェクトが見つからない状況で研究会の活動方向を模索していたところ、当時の日本道路公団の東海北陸道新設工事で本谷橋の建設にこの工法の採用が決まったのです。

小職は技術検討委員会を適切に運営するには自分でこの工法を実験研究することの必要性を強く感じ、文部省の科学研究費補助金を受けて横浜国立大学で研究を開始しました。これが我が国初めての波形ウエブPC構造の研究となりました。何か新しい技術を開発したいと思い波形ウエブをコンクリートフランジに直接埋め込む方式を提案することができました。折しもこの成果がスパン97m、橋長198mの本谷橋の構造に採用されることになったのです。研究開始から実橋への適用までこれほど短期間の技術開発は中々例がないことだと感激しました。日本道路公団ではこの本谷橋の1999年の完成を契機として次々と波形鋼板ウエブPC橋の採用が始まり、我が国でのこの工法の飛躍的な発展へとなったのです。

フランスではその後は全くこの工法の橋梁は建設されていませんが、その理由はこの工法の優位性は認識されつつも実際の工事の契約時には設計施工者の都合で通常の工法が優先されてしまうからだとフランス人技術者は言っていました。その点、日本では発注者が工法を選択、指示できるのでこのような新工法が広く採用され易いと羨ましがっていました。なお、我が国では近年のダム建設においてRCD工法が主流となっていますがこれは建設省(現国土交通省)が主導的な役割を果たしてきたからで、決して民間主導でここまでRCD工法が普及したのではないのです。この点で波形鋼板ウエブPC橋とRCDダム工法とは類似な発展の経緯があります。

今後はこの工法の新設橋梁への一層の適用と相俟って既存波形鋼板ウエブPC橋の維持保全に力を注ぎ、重要社会基盤構造物として末長く供用していくことが肝要です。PC技術者の一層の研鑚を期待いたします。

会長あいさつ

わが国の波形鋼板ウェブプレストレストコンクリート(以下、PC)橋は1993年の新開橋(新潟県)に始まる。その後約25年間で本構造は飛躍的な普及を果たし、現在では約220橋(2019年度末時点)の施工実績に至っている。波形鋼板ウェブPC橋発祥の国であるフランスの施工実績が数橋にとどまっていることを考えると、驚異的な数字である。

波形鋼板ウェブPC橋の最大の特長は軽量化である。ウェブを鋼板に置き換えることで、約25%の自重低減が可能となる。さらに、鋼板形状を波形とすることでプレストレス導入の効率化、および高いせん断座屈強度を実現することができる。合理性に富んだ新しい構造として、多くの橋梁技術者が高い関心を寄せ、当協会顧問である池田尚治横浜国大名誉教授を初め、各社、 各機関で精力的な研究活動が行われた。これにより、それまで鋼構造に対して疎遠であった多くのPC技術者が、溶接、座屈、接合、塗装などに関しても知識を深めるきっかけとなった。波形鋼板ウェブ構造の出現は、多くの技術者に大きな刺激を与えたのである。

さらに、斜張橋やエクストラドーズド橋などの吊り構造との併用による長大支間への挑戦、プレキャスト部材との組み合わせによる施工の合理化など、わが国独自の研究開発を進め、技術の進化を実現してきた。今や、わが国は施工実績数だけでなく、技術的にも世界をリードするレベルにある。

さて、波形鋼板ウェブ合成構造研究会は、新開橋の完成した1993年に発足した。その後、1998年には、『波形鋼板ウェブPC橋 計画マニュアル(案)』を発刊した。わが国で初めて張出し工法に採用された本谷橋(1998)の事例を参考に設計方法を世に示したものであり、その後の普及に対して大きな貢献を果たした。 その後も、海外の波形鋼板ウェブPC橋の調査、供用中の橋梁調査などを実施し、貴重な情報の発信を積み重ねてきた。今後も当技術に関するさまざまな技術情報を発信していくことが、当研究会の使命と考えている。

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